「ぼくはうみがみたくなりました」


はじめまして、コラムライターのもんたと申します。
富士山のふもとでリハビリのおねえさんをしています。

「リハビリ」というと、歩く練習をしたり体の調子を整えたりと、骨折や脳卒中、スポーツなどでお世話になるというイメージが強いかもしれません。
でも実はそれだけではなくて、「発達障害」と言われる、身体・知的発達に遅れのある子ども達にも関わっているのです。

私の担当さんにも、ハンディを持った子がいますが、いや非常に元気!
毎日大笑いとニヤニヤとびっくり!が満載です。

そんな私のコラムでは、「発達障害」と言われる子ども達を描いた、映画や書籍などを紹介していきたいと思います。
割と数は多いとは思いますが、あまり知られていないものをご紹介したいなと。
時には、担当の子たちのおもしろ話も挟んでいきたいと思っています。

ところで、発達障害ってなんぞ?

平成17年施行の発達障害者支援法では、長い定義があります。それについてはこちらをご覧下さいね。

私だって、ムズカシイ言葉は苦手です。
簡単に言うと、発達障害にはいろいろな種類があって、脳の機能障害によって起こるもので、大抵小さい頃に見つかりますよ、ってことです。
時々テレビなどで言われている、アスペルガー症候群やAD/HD(注意欠陥多動性障害)もこれに当たります。

就学した子については、文部科学省実施した調査によると、知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は約6%といいます。(※医師の診断による結果ではない)

100人中6人は、何かしら困難さを抱えているってことですね。

実は、アインシュタインも高機能自閉症やアスペルガー症候群だったのではないかと言われています。聞いたことがある方もいるかもしれませんが、トム・クルーズは学習障害であることをカミングアウトしていますね。

AD/HDに関しては、坂本龍馬や織田信長に始まり、ジョン・F・ケネディ、ウォルト・ディズニー、マイケル・ジョーダン、ピカソ、ゴッホ、コロンブス、モーツァルト、エジソン、ダ・ヴィンチ、もそうであったと言われています。

現代でも、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズらがAD/HDであると言われています。

※各障害の詳しい解説はこちら

自閉症のコト

さて、今回は発達障害の中の、「自閉症」にスポットを当てた映画をご紹介したいと思います。
ここ数年、メディアの中でも良く聞かれるようになってきたのでご存じの方も多いと思いますが、少し説明を。

例によって、定義や詳細特徴の解説はご参照下さい。

先天的な脳の機能障害、と言われていますが、詳しい原因などは未だ研究中です。

特徴としては、

◇対人関係が苦手(相手との距離がうまく取れず、近づきすぎたり、避けたりしてしまう など)
◇コミュニケーションが苦手(相手の言う事をうまく理解できずにオウム返しになってしまう/暗黙の了解が読み取れない など)
◇想像すること、想像して行動することが苦手(相手の気持を想像しにくい/一つのものや行動に固執することもある など)

という3点が主なもの。
他にも、他動、感覚異常、睡眠障害などを持つなど症状は人によって様々です。
自分の興味にとても固執しやすい子から、「コミュニケーションが取れて勉強もできるけど、ちょっと変ってる」と思われる程度の子まで。

とても軽度の子も含めると、100人に1人は自閉症、と言われています。

ぼくはうみがみたくなりました

自閉症の映画といえば、「レインマン」が有名ですね。

日本でも、ドラマ「光とともに」「僕の歩く道」などで、自閉症の主人公が描かれていました。

<光とともに・原作(左)/ドラマ(右)>

<僕の歩く道・ドラマ>

「ぼくはうみがみたくなりました」(以下「ぼくうみ」)は、自閉症の息子を持つ山下久仁明さんが執筆した同タイトルの小説が基になっています。

主人公が自閉症、という小説は日本では初なんです。

<ぼくうみ・原作(左)/映画(右)>

『(c)ぼくうみ実行委員会』

「ぼくはうみがみたくなりました(2009年4月初公開)」予告編

映画は、看護学生の明日美が、偶然出会った淳一に声をかけ、ドライブへ行くところから始まります。
話しをしながら、海までのドライブをするうち、どうも淳一が普通じゃないように思えてくる・・・というかどう考えてもおかしい。
そんな二人のドライブに、声をかけてきた老夫婦も加わり、4人の旅の始まり始まり。

自閉症の人に多い仕草や、行動が描かれ、また、周囲の人達の様々な反応も描かれ。
誇張とも感じる方もいるかも知れませんが、実際にある小さなエピソードが詰まっています。
コミュニケーションの苦手さ、理解・判断の苦手さが引き起こす周囲の人との揉め事や、突発的な事や苦手なことを受け入れにくいことから起こるパニック。
そんな彼の行動に対する、受け入れてくれる人の目、拒む目、戸惑う目、様々あります。
それでも、彼は何もわかっていない訳ではなくて、信頼している人へは彼の気持ちを示してくれるんです。

「あのね、自閉症の子ってね、地雷源に立っているようなものなんだよ」

あなたは周囲の状況を理解するのに、何を手がかりにしますか?
周りの景色や人の表情や動きを見たり、音や声を聞いたり、物を触ったりして情報を得て、その情報を基に解析していくのではないかと思います。

自閉症の人はそれが苦手です。

情報を取り込むこと、それを整理すること、統合して解析すること、様々な過程で苦手さがあります。
また、情報を取り込む時点で頼りになる感覚、見た・感じた感覚が弱かったり、強すぎたりと、私たちと同じではないこともあります。
そのような状態なので、周りの状況や自分の体の感覚を整理・理解しにくく、彼らは常に不安定な状態なのだと思います。
(※あくまでも症状の一部分で、必ずしも全員に当てはまることではありません)

生まれつきそんな状態で生まれてきた彼らの視点から見たら、私たちにとって「普通」の世界はどんなふうに見えるんでしょう?
逆に、彼らにとって「普通」の世界ってどんな感じなんでしょう?

決して、お勉強のための難しい映画ではないです。
関わったことのない人にとっては、
「自閉症の人ってどんな感じなの?」
ってところからだと思います。
その答えにもなれる映画ではないかな。

「ぼくはうみがみたくなりました」公式HP
「ぼくはうみがみたくなりました」製作実行委員会

上映してるよ!

この映画「ぼくはうみがみたくなりました」は、
ロードショーと自主上映での公開が予定されています。
興味を持った方、観に行かれてはいかがでしょう。

<ロードショー>
4/2(金)~4/16(金) 福島フォーラム
4/3(土)~16(金)川崎市・アルテリオ
4/2(金)国会内上映会

<自主上映>
全国各地、いろいろ開催されてます。
詳細はこちらから。

100分の1の存在

原作・映画の中にこんな言葉が出てきます。

「人間は、生物学的に見ても、約1%の確率でハンディを持った子が生まれてくるらしい。100人に1人は生まれてくる計算になる。

99人の健常者は、たった一人の人間にそのハンディを背負ってもらって生きているわけだ。自分の背負うべき分のハンディの確率まで背負って生まれてきてくれた100分の1の存在に感謝しなきゃいけないんだ。」

自分に見える範囲ではいなくても、どこかにその100分の1の存在はいるのです。
そんな100分の1の存在のことを、もう少し知ってみませんか?

この記事を書いた人

もんた
東京産まれ、埼玉育ちのリハビリのおねえさん。現在は富士山のふもとで発達障害児と関わっています。風に吹かれることと、活字と音楽を愛するちょっと変わった人。本とフェスと担当の子たちの笑顔がエネルギー源。

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