出さない手紙をきっかけに


先日、大切な人へ宛てる手紙を書くという機会がありました。
本人には読まれないけれど、その人を知るためのアンケートという目的でした。

私はその日、昨夜に見た夢の影響もあって、母へ宛てることにしました。
夢では、母が死んでしまうという内容でしたが、私は時々同じような夢を見ます。
その度に、今までの日頃の感謝の気持ちがどっと溢れ出してくるのです。
同時に、普段は何も感じないでいる自分に気付かされてもしまいます。

その手紙を書きながら、周囲には人がいるのにもかかわらず、私の目には涙が溜まっていきました。ガマンガマン。
鼻水も容赦なく出てきたけれど、花粉症だよ〜っていう無言のアピールは成功したと願います。
そして、最後まで無事に書き終えました。
本人には読まれないのはわかっているけれど、何だか心はすっきり。

こんな予期せぬ感情の高ぶりに、「よしっ、きちんと本人に届く手紙を書こう!」と思った私。
帰り道、神保町をぶらぶらして、きれいな春らしい黄色いレターセットを買いました。

身近な人ほど想いを伝えるのを後回しにしがち。だからこそ、“ありがとう”を感じた時にすぐ伝えなきゃ、すぐ別の日常がやってきてしまう。
面と向かって言えない言葉、手紙なら言えることも多いはず。
照れくさいけど、書いてポストに入れてしまえば、自分の手元に恥ずかしい言葉は残らないし、後は相手任せでOK。
自己満足の世界なのかもしれませんね。

そんな手紙にも恋心が加わると、ラヴレター(死語?!)になります。
今では、メールがその役割を果たしていると思いますが、手紙の場合は、よーく言葉を考えて、ペンをとって、切手を貼って…となると手間がかかる分、メールよりきちんと伝えようっていう気持ちになると思います。
きっと相手も「おっ」って思うはず(注)。
(注)相手との距離感を間違えると、引かれてしまう可能性があるので、ご注意を!!

と、ここでそんなラヴレターを題材にした本を紹介させていただきます。

『恋文の技術』 作者:森見登美彦 ポプラ社より

笑えます。
ただただ、主人公の視点で永遠と手紙が書かれているという珍しい構成で、今までにない読後感を味わえます。
手紙を書きたくなるのと同時に、森見さんの独特の言葉づかいとテンポにハマってしまう可能性がありますが、あしからず。

TwitterやFacebookもいいですが、手紙もなかなかいいもんです。ぜひ。

この記事を書いた人

MEG
元システムエンジニア、2012年4月からデザインの専門学校に通います。本の装丁を仕事にすることが目標です。(電子書籍化にビビリながら)
文字、色、本、紙に興味があります。
ほそーくながーく文通をつづけています。 

あわせてどうぞ