“働く”って、めんどくさくね? vol.7「北海道が好きなんだよね」


こんにちは。
無定住ハチヨンライターの桃子です。
ハチヨンライターって、ハチワンダイバーみたいだよね。
ってつい思っちゃった自分にちょっと落ち込みながら書き進めています。
(ちなみにハチワンダイバーはマンガのタイトルです。溝端淳平くんでドラマ化されました。見てないけど)

さて、
日本の異境・北海道(←今勝手に命名しました)。
失恋したら一人旅に出ます、北海道(←これはホント。多いみたい)。

北海道は、広い。
なんてったって、九州+四国×2=北海道。めちゃ広い。
道は視界から消えるまでまっすぐ。スピードはまるで高速道路(犯罪です)。
あたりは牧場、牛、牛、牛、牛、牛!!!
そのほか、鹿は出るわ キツネに見つめられるわ、猿に威嚇されるわ。
自然のあふれる島、北海道。

そんな北海道に魅せられて移住をしてくる人は多いといいます。
彼もその一人。
今回インタビューした入倉君は、北海道大好き自然大好きの、めちゃくちゃテンションの高い青年でした。

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「北海道が好きなんだよね」

“働く”って、めんどくさくね? vol.7「北海道が好きなんだよね」
入倉建(北海道札幌市/山の調査中!)
1984年7月4日生まれ。新潟県五泉市出身。網走にある、東京農業大学のオホーツクキャンパス卒業後、北海道で決まっていた内定を蹴って4ヶ月間海外へ。帰国後も、再び北海道で暮らす。

もう、根っからのアウトドア派!

いきなりだけど…決まってた内定を蹴ったんだって?

ああ、そう(笑)
最初は大学を卒業したらそのまま北海道で就職するつもりだったんだよね。それでお金を貯めてから地球一周旅行に行こうかと思っていたんだけど、何度も海外に行っている人に「行くなら今だよ」って言われて。
「だよな」って、内定蹴って海外に行ったんだ。親にはめちゃめちゃ怒られたね。
帰国してからは北海道のニセコで、ラフティングの会社で働き始めたの。夏はラフティング、冬はスキーやスノーボード。トラックでボートを運んだり、体力仕事だったな。去年の秋にその会社を辞めて、今の札幌に移ったんだ。

けっこういろいろなことをやってるんだね。

そうだね。でも、とにかく北海道ってことは決めてたの。俺の実家は新潟だけど、俺は北海道が好きなんだよね。とくに札幌が。
いろいろな人がいるし、イベントもたくさんあって、アンテナを張っていればいろんなことがあるからさ。だから札幌に住みたいんだ。

今はどんな生活を?

山の調査の仕事をしながら、バンドを組んでディジュリドゥという楽器を演奏してる。あと、ジャンべっていう太鼓も叩いたりするよ。

山の仕事というのは、札幌近辺の山に入って、動物の生態などを調査するんだ。
山に入って、熊や鹿などの動物の痕跡を探すの。フンや足跡、木に残っている爪痕、木の皮を剥がした跡とかね。それで、札幌でどういうふうに出没してるかといったデータを集めるんですよ。

それは、野生動物が街に来たりするから?

そうだね。痕跡を調査することによって、だいたいどの辺りに動物が出没するかがわかる。
最近は町中に動物が出ることはめったにないけれど、町のはしっこにはときどき出る。山沿いの畑なんかは、熊に荒らされることもあるよ。
熊は一回食べると覚えちゃうからね。
熊の行動範囲とかはすでにわかっているんだけど、熊が一頭とは限らない。実際にどういう熊が何頭いるかがわかると対策もできる。
俺たちは、仕掛けたトラップや木の剥がし跡とかに毛が残っているのを持って帰る。それを専門家が調べて、固体を識別したりするんだよ。

自然があるところならではだね。

うん。俺、たぶん根っからのアウトドア派ですね。ずっとキャンプとか釣りとか好きで、自転車で旅行するのが楽しくて仕方なかった。子供の頃から家の裏が、山のセミの声で起きるような自然にかこまれた生活だったからだと思う。
別に自然が大切だとか、大事にしなきゃとか、そういう意識が強いわけではないんだ。
100億年経ったらぜんぶ滅びるかもしれないんだからさ。俺はただ、自然と一緒に生活するのが好きなの。晴れてたらとりあえず外に行きたいもん。
そんなだから、今の仕事は性に合ってるんだよね。

“ホーム”をつくりたい

これからも自然に関わっていく?

そうだね。そして将来は……“ホーム”をつくりたいね。
食料を自分で作ったり、縫い物をしたり、できるだけ自給自足する生活がしたい。自分で油しぼったりね(笑)最終的に全部自分でやれるようになったらいいよね。
そしてそこを基地として、いろんな人が帰ってこられる場所にしたい。
そういう“ホーム(家)”。

そこは自給自足なんだ。

せめて自分の食べるものくらいは自分で作りたいよね。
自分のたとえばお金がなくなったり、日本の外交がうまくいかなくなっても、最優先で守らなきゃいけないのは食料だと思うんだ。最低でも自分たちの作ったものを食べれるようにするのが生きていくことだと思う。
今、日本の自給率って低いでしょう。外国の製品が安いしね。キューバとかでは、経済危機に陥って食料の輸入ができなくて、どうしようもなくなって中央分離帯とかに野菜を植えたりしたらしいし。
だからといって、完全な自給自足にこだわる必要はないかな。俺はあまり物を買わないし捨てないようにしてるけれど、携帯だって使うし、そういうところで“鎖国”になっちゃいけないと思う。

頼りすぎず、頼らなすぎず、ってことかな。
“ホーム”は、このまま北海道に作りたいの?

北海道がいいかなと思っているよ。今の山の調査の仕事は一年中あるわけではないけれど、とてもおもしろい。それに、札幌ではバンドをやっていたりと、いろいろな人とのつながりが出来てきたから、大事にしたいね。
べつに北海道とか日本だとか、場所を決めているわけではないけれど、今のところは北海道にいたいと思う。たぶん、ここが好きなんだろうな。

好きな場所で暮らせるって、いいね。毎日が楽しそう。
内定を蹴ったことに、後悔はない?

正解だったよ、内定蹴って!
もうほんとに、最高にそう思う。
だって、あのとき就職していたら今の俺の部屋には何もないよ。ギターとかディジュリドゥとかの楽器や、自分で草染めしたTシャツだって、何もないんだよ。

あのときからね、僕の人生は、非常に動き出しました。
今、最高に楽しいよ。

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「あたし、ビルとか廃墟とか好きなんだけど」と言ったら、彼は、「いいんだよ!」と笑った。「俺はただ、自然が好きなだけだもん」

休日にはお向かいの公園にふとんを干しにいくという。
自然だけでなく、公園とも共存しているのか…。

話しているとなんとなく、彼のテンションの高さは、サービス精神だったり寂しさだったりといったものが奥にあるのかな、と思った。
明るく、楽しく話してくれる。

入倉君のつくる「ホーム」は、きっといわゆる、“人間臭い”場所になる気がする。
都会の生活に疲れたら、行ってみるのもいいかもしれない。
そしたら、なんか元気が出そうだ。
それにきっと、たった数日の滞在でも「おかえり」って迎えてくれるような気がする。