家なし。職なし。とくになんもなし。
日本ぶらぶら旅行中がはじまって、はや4週間。
日々、いろんな出会いを呑気に楽しんでおります。桃子です。
今回のインタビューは、東京都のハチヨン・ワタナベさん。
彼女はアメリカからの帰国子女。そのことで悩んだことも、プラスになったこともあったというけれど、「今、もう、すっごく楽しい!」と目をきらきらさせる彼女に、英語はできんが目を見りゃなんとかなるスタンスの私も、英語って楽しそうだなあと思ったのでした。
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「やりたいことをやる。私、よくばりだから」
プロフィール
ワタナベ ユウコ(字幕翻訳学校生/東京都杉並区)
1985年1月12日、埼玉県生まれ。5歳〜9歳までアメリカで過ごす。帰国後、演劇にのめり込み、アメリカの大学の演劇コースへ進学。東京の老舗劇団の研修生を経て、今は働きながら英語の字幕翻訳の学校に通う。
帰国子女の私。
アイデンティティは、英語にあるかもね
字幕翻訳の学校に通う前は、女優を目指していたの?
演劇か字幕かどっちかやりたいっていうのはほんとに昔から、高校のときからあったの。進路としては、どちらか選べないくらいどっちもやりたかった。でもそのときは結局、演劇選んだの。演劇を辞めた今は、じゃあもういっこの夢追うかって字幕の勉強をしてる。
そのもういっこの夢が“字幕翻訳”なんだね。
今は仕事をしながら、字幕翻訳の勉強もしているの?
そう。普段は事務の仕事をしながら、週に1回、“字幕翻訳”を勉強する専門学校に通ってるんだ。“字幕翻訳”っていうのは、映画の字幕・海外ドラマの吹き替え用のセリフ・海外ドキュメンタリーのナレーション原稿の3つがあるの。その全部を、2年かけて勉強するんだ。学校はまだ、通い始めたばっかりだけどね。
授業では、好きなDVD観て、字幕で出てくるセリフを100個書いて、どうしてこういう訳になるのかなーとか、疑問に思ったこととかを書き出したりする。翻訳の勉強をしているときはもうすごくおもしろい!楽しくて目がきらきらしちゃう!
すごく楽しそうだね。学校にはどんな人が多いの?
学校には、若い人だけじゃなくて主婦の人とか、いろいろな人がいるよ。子どもがいる主婦とかは外で働けないから、家で家事しながら仕事できるものを探して字幕翻訳にたどり着いた人もいる。プロを目指している人はたくさんいるし、甘い世界じゃないのはわかっているから、頑張らないとね。
帰国子女で英語が得意なのは、武器になるんじゃない?
私は帰国子女だからか、日本語が中途半端なのね。「説明がわかりづらい」って言われることがよくある。まず自分で整理してから言うようにしてるけど、それでも上手く伝わらない。たぶん日本語の引き出しが少ないんじゃないかと思う。どうしたらいいのかは、まだ模索中なんだけど。
帰国子女ならではの悩みなんだね。
アイデンティティが、英語にあるかもしれないな。英語なければ私ナシ、みたいな。なにかしらでも英語に触れてたいなと思うんだよね。小さな頃に外国にいたっていうことは、いい意味でもネックになったり、プラスになったりもする。だったらいっそのこと、帰国子女だっていうことを生かしたらいいと思ったんだ。英語に関わっていくなら、海外で生活していた経験は武器になるもんね。そしてゆくゆくは、戸田奈津子さんのような翻訳家になりたいな!
粘り強く続けること
学校を卒業したら、その後はどうするの?
最終的に、学校の卒業テストでもトップの2〜3人しか翻訳の仕事が来ないみたい。卒業してもすぐに食べていける生活じゃないんだ。字幕会社の契約社員のような立場で少しずつ仕事をこなして、食べられるようになってきたらフリーを目指すというのが、主な流れだよ。
翻訳の業界って、厳しいんだね…
厳しいよ〜。厳しい道だけど、やっぱりやりたいことをやるのがいいかなと思ったんだ。演劇だけは続けると思ってたけど、やめちゃったからさ。
あんなに好きだった演劇から、今は離れたいんだよね。最近、楽しみにしていた舞台を観に行って、途中で爆睡しちゃったんだよ。私の中で、演劇に対するなにかが変わったんだなあと思った。悲しいけどね。
けれどまあ仕方ない! そのぶん字幕でなんとかする、って思ってる。粘り強く続けたら、何かしら形になると思うんだ。
それに、字幕翻訳って、英語だけじゃなくて映画やドラマっていう演劇の要素もあるんだよ。だから、字幕翻訳の仕事は、英語も演劇もやりたいっていう昔からの夢が、両方とも叶うんだ!一石二鳥なの。よくばりなんですよ、私(笑)
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最近、英語を話せる人は多い。
会社によれば、“英語+さらにどっかの国の言語”を求められることだってある。
身近になってきた英語。
けれど洋画を見るときなんて、英語の言葉はさっぱり聞こえてきていない。
いちおう大学受験まで英語を勉強してきたので、なんの話題かくらいはわかるけれど、字幕を目で追って意味を理解し、俳優たちのセリフは雰囲気だけ感じている。だってわかんないんだもん。
過去に「シカゴ」と「トロイ」を字幕なしの英語で見たときは、誰が悪役なのかもわからなかった。誰と誰が恋人で、誰が死んだかを理解するのが精一杯。正直、登場人物の名前すら聞き取れなかった。悲しい。
“字幕翻訳”がなかったら、映画やドラマから得られるたくさんの感動や笑いや悲しみも、わかんないんだろうなあ。今まで当然のように映画を見てたわよ。
“字幕翻訳”は、英語を通して楽しみをくれる仕事なんだなあと、外国映画好きとしては、しみじみと感謝したのデシタ。